「聴竹居」に見る、モダンな中間領域
2015.12.17
紅葉の美しい季節、京都の「聴竹居」を撮影で訪れました。
「聴竹居」は、建築家・藤井厚二が京都の天王山に建てた自邸です。
竣工は1928年。コルビジュエのサボア邸が1932年の竣工ですから、
それより4年早いわけです。
1925年のパリ万博はアールデコの幕開けでした。
藤井厚二はヨーロッパを周遊した経験もあり、
このデザインの流れも良く分かっていたようで、
「聴竹居」には至るところに、
アールデコのディテールを見出すことができます。
しかし、この住宅に実際に身を置いて、最も印象深かったのは、
大きな縁側ともいえる空間です。
庭に張り出すように作られた、縁側というよりサンルームと呼びたい空間。
三方はガラスに囲まれ、解放することができます。
今でこそ、庭は苔むして樹木の育った和庭の趣ですが、
藤井厚二の一家が暮らしていた当時は、芝生だったとのこと。
そのモダンさが想像されます。
縁側で特徴的なのは、ガラスをつけ合わせたコーナーです。
この一角があることで、視線の抜けが大きく確保されています。
この縁側は、まさに室内と庭の中間領域。
家中で最も気持ちよく、季節を感じる場所です。
住宅に、内と外をつなぐ空間を作ることが注目されている今、
87年前に建てられた木造建築のこの家に、改めて学ぶところがあります。
(構成・文/モダンリビング編集長 下田結花)