多彩なスタイルのインテリアが混在する色とりどりの空間

鎌倉の坂の上から駅に近い平らな土地へ移り住むにあたり、お気に入りのものに囲まれた家を希望したTさん夫妻。柱のない34.5畳・天井高3mのLDKを実現し、南北2つのテラスを設けて光と風が通り抜ける開放的な空間をつくり出した。夫の趣味のバンド演奏を楽しむ防音の音楽スタジオはガレージ上に配置し、玄関から専用階段でアクセスできるように。1階をパブリックスペース、2階をプライベートスペースとする構成は設計側の提案だが、細部は夫妻が主導。チークの無垢材ヘリンボーン床、パントリー入口のアーチ、玄関横の南欧風土間、観音開きの特注ガラス扉、イタリア製の家具やタイル、照明など、考え抜いたデザインを重ね、世界にひとつの住まいとなった。

ガラステーブルはカッシーナの「ボボリ」。ツイストしたメタルの脚部はボボリ庭園の木立をイメージしたもの。ダイニングチェアもカッシーナの「オラ」をセレクトした。

壁際に置いたのは、ポルトローナ・フラウのハイキャビネット。青みがかった灰色の繊細な格子が美しい。内側にさりげなくレザーが使われている。

キッチンはクチーナで製作。一部に木を使いリビングになじませた。床は大理石調のタイルに。正面扉は和室入り口。石川県の組子細工建具職人に依頼して製作したもので以前の家で使っていた。本物の技と美しさは洋空間にも溶け込む。

リビングと玄関横の土間も半円を描く開口でつながる。立体感のあるタイルを縦長に用いている。

玄関の上がり框と反対側に設けた階段は、ご主人の音楽スタジオ兼仕事場へ上がる専用のもの。土間の床のタイルには錆鉄の風合いのあるものを選んだ。

玄関横の洋風の土間から全開放型の扉でヨーロッパテイストのテラスへとつながる。観音開きのガラス扉は特注で製作。ブルーグレーの色は奥さまが選んだもの。

奥さまがローマで目にしたパティオのイメージを再現した外部とつながる土間。リビングに入る吊り戸は特注で製作。エンジの色は床のタイルの一色を用いたもの。

和室天井は船底で葦仕上げ。丸窓障子は建具と同じ、石川県の職人に依頼して製作した。壁のベンガラ色が金沢の町家を思わせる。

撮影/梶原敏英

美しいディテール

白とガラスで統一した玄関ホール。窓外のテラスのタイルまで白で揃えた徹底ぶりには設計者の美学が感じられます。白を基調としつつ素材を巧みに切り替えることで単調さを避け、清澄で美しい空間に仕上げています。

建築知識ビルダーズ編集長 木藤阿由子

リモルデザイン ミウラデザインスタジオ
https://www.remoldesign.com/
物件情報
物件名/T 邸
所在地/神奈川県
延床面積/235.31㎡
1F/143.60㎡
2F/91.71㎡
家族構成/夫婦
構造/木造SE構法
性能/耐震等級_3
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